日本磨き合い通心9月号「外国の掃除観と技術を日本に生かす」
まだまだ暑い日が続きそうですね。
皆様には暑さに耐えながら体力を消耗しつつも頑張っておられることと思います。
私は空室クリーニングの時は、朝早くから音出し無し作業から始めます。
そんな時は何故か神聖な感じがして不思議です。
この感覚は日本人だけでなく、
インドや中東イスラム圏の人々も同じような感覚があるらしいです。
そこで外国の掃除の考え方と技術を見て
日本に生かせないか考えてみようと思い調べてみました。
掃除は単なる「汚れを取る行為」にとどまらず、
人々の価値観や文化、暮らし方、
さらには環境との関わり方を反映するものと思います。
日本では古来より「清め」と言う精神性と結びつき、
神社の境内を掃くことや、正月前の大掃除など、生活と信仰が重なり合ってきました。
現代でも「清潔さ」は礼儀や美徳とされ、きめ細かさと丁寧さが清掃文化の根底にあります。
しかし、グローバル化の中で他国の視点や技術を取り入れることで、
より持続可能で多様な「掃除のあり方を」を構築できるのではないかと思い、
外国の特徴を整理して日本に生かせないかを考えてみました。
1.欧州ー環境配慮と制度の徹底
ヨーロッパでは掃除は「生活と環境を守る行為」として
法規制や社会制度と密接に結びついています。
EU各国では、強力な洗剤や化学薬品の使用を著しく制限され、
生分解性や環境負荷の低さが重視されます。
特にドイツや北欧諸国では家庭やオフィスで用いる洗浄剤にも
エコラベルや認証制度が整備され、利用者の意識も高いです。
(ノルウェー出身の知人から)
また建築物の清掃においても「素材を長持ちさせる」視点が重視され、
石畳や歴史的建造物を守るために、高圧洗浄や薬品を避け、
蒸気や微生物の力を使った方法が発展しています。
日本に応用できる点は、化学物質への依存を減らし、素材の寿命を伸ばす清掃という考え方で、
特に高齢化社会において住宅や施設の長寿命化は大きな価値を持つものと思います。
日本の繊細な「きめ細かさ」と欧州の「環境・耐久性重視」を組み合わせることで、
より持続可能な清掃体系が生まれるのではないかと思います。
2.アメリカー効率合理性の追求
アメリカでは「効率」が優先されています。
大規模清掃や産業用清掃では、機械化・自動化が徹底されており、
床洗浄機、カーペット用の大型ドライバキューム、ドライアイス洗浄など、
先端的な技術が重要視実用化され、
さらに近年はロボット清掃やAIによるビルメンテナンス管理が急速に普及しています。
アメリカの特徴は「サービス業としての掃除」が確立している点で、
ハウスクリーニングは多様なメニュー化が進み、
住まいの状況に合わせたオーダーメイド型の清掃サービスが普及しています。
日本でもアメリカからの影響が大きく、
効率化と、サービスの多様化が進んできているものと思います。
日本の清掃は「丁寧さ」が強みだが、
その反面、時間やコストがかかりすぎる傾向にあります。
AIや機械化をうまく取り入れれば、
職人技と効率の良いバランスを実現できるものと思います。
また、利用者のライフスタイルに寄り添ったサービス展開は
日本の「おもてなし」精神性に通じるものと思います。
3.アジア諸国ー共同性と循環型の知恵
アジアの国々では掃除を共同作業として捉える文化が根強いです。
例えば、シンガポールでは、町全体を清潔に保つために厳しい罰則制度がある一方で、
学校や地域単位での共同清掃が教育として組み込まれています。
中国や韓国でも伝統的に「年末の大掃除」は家族や地域の結束を高める行事のようです。
また、インドなどでは「自然素材」を使った清掃が古くから行われていて、
灰や土、レモン、灰汁などが汚れ落としや消毒に活用され、
これは現代のエコクリーニングに通じます。
日本が学べるのは、コミュニティーとしての掃除と自然循環型の知恵であろうかと思います。
現代日本では清掃が「サービスとして外注化」されがちですが、
学校や地域社会で共同清掃を重視すれば、
人と人とのつながりや環境意識を高められ
また、重曹やクエン酸・酵素など自然由来の資材を生かす取り組みは、
既に一部では広がっているものの、体系化できる余地は十分にあるものと思います。
4.中東イスラム圏ー宗教と清掃の結びつき
イスラム圏では、清掃は宗教的義務と深く関係しています。
礼拝前の洗浄(ウドゥー)や、日常生活における清潔保持は、信仰実践の1部とされています。
住まいやモスクの清掃は「新鮮さを保つための行為」であり、
単なる衛生管理ではなく、精神的価値を帯びています。
この考えは日本の「払い」や「清め」とも近いかなと思います。
現代日本に取り入れるなら、掃除を「心の調律」と捉える視点として応用できるものと思います。
掃除をすると気持ちが整う、
場の空気が変わると言う感覚をサービスや教育に組み込むことができるものと思います。
5.日本ー繊細さと精神性の融合
改めて日本の強みを整理すると
次の3点かと思います。
1.細部への配慮
-ほこり一つ見逃さない丁寧さ
2.清めの文化
-物理的な汚れではなく、精神的抽象的な「穢れ」を払う意識
3.意識との融合
-掃除された空間は美しい」と感じられる文化感覚
弱みは、効率化・省力化の遅れと、
化学薬品に依存しがちな点であろう。
ここに他国の要素を融合させることで、
新しい清掃感を構築できるのではないかと思います。
清掃は国や文化によって形は異なりますが、
共通するのは「より良い生活環境を求める人間の根源的な営み」であろうかと思います。
日本の強みである繊細さと精神性に、
欧州の環境意識、
アメリカの効率性、
アジアの共同性、
イスラム圏の精神性を組み合わせれば、
21世紀にふさわしい「調和的な清掃文化」を築けるものと思います。
それは単に汚れを落とすのではなく、環境を守り、人と人を結び、
心を整える行為として社会に根付いていくのではないかと思います。
皆様はどのようにお考えになられますでしょうか。
「日本磨き合い通心」とは
『日本を磨く会』が会員様向け(主に清掃業者様向け)に毎月発行している会報です。
弊社では、毎月原稿を協力しております。
ご興味のある方は、日本を磨く会HPをご覧下さい。